~ 五感で通じ合う心の結びつき ~
- 2023年
- F30号(727㎜×910㎜) 木パネル アクリル画
~花の茶室が語りかける~
楕円の曲線上にならぶ季節の花達に囲まれているのは茶室の空間。
一服のお茶を通じて、二匹の蝶が心を通わせている。
一座建立とは茶席において亭主が心を尽くしてもてなし、客が感動で満たされたときに生まれる特別な一体感のこと。
もてなしは水が流れるようにさりげなく。とは先代(母)の言葉。
例えば花。四季を通して床の間だけでなく、家の至ることころに活けられた花々。一年中いつでも活けることができるよう庭で大切に育てられた。
茶室の中と同様自らの生活を洗練された高い基準で律し、見えないところまで配慮した生き方をされた先代の心は茶の心で説明できる。
茶人は歪んでいる茶碗を好む。
茶道が本質的に不完全を尊ぶのは、我々が人生と呼んでいるこの不可能なものの中で、何か可能なものを成し遂げようとする穏やかな試みだからです。(「茶の本」より)
我とは何か
心とは何か
先代の心を茶の道からひもとくための絵画。
◆絵のモチーフについて◆
・二匹の蝶
茶室の中では身分も性別も年齢も区別なく皆対等。
亭主と客人が、茶を通して静かに心が通じ合う様子を、二匹の蝶で表現。
二匹の蝶は、母と子、夫婦(イザナミイザナキ)、経営者と従業員、サービス提供者とお客様などにも置き換えられる。
(蝶は、古くから魂の象徴だといういわれがある。)
・茶の木、国生みの鉾、叶結び
日本人の詫び錆びの美意識は古事記で語り継がれる神道から続くもの。
古事記では、イザナミとイザナギが鉾でかき混ぜて日本の島国が生まれた。
茶筅でお抹茶を混ぜる行為も神聖な儀式。
茶道と神道とのつながりを古事記の鉾や叶結びで表現。
・茶の木は平和の象徴
茶の木はツバキ科ツバキ族(カメリア)の常緑樹。中国南部地域が原産で日本の緑茶以外にも紅茶やウーロン茶など世界中で愛飲されている。
・日本人の美意識としての楕円
真円や正方形は完全の美。
日本人の茶の湯の美意識(詫び)は真逆で歪んだ長方形や楕円の方を好む。 欠けやズレを無いものにしようと努力するのではなく、むしろ積極的に愛そうとする行為。
・利休の樂茶碗
現代に至る茶道を大成した利休が陶工・長次郎に作らせ、その子孫である樂吉左衞門家が代々作り続けて現代に伝わるのが、樂茶碗。
ロクロを使わずに粘土を手でこねて茶碗の形に広げていく「手捏(てづく)ね」という成形方法で作られた樂茶碗は、必然的に手の中にすっぽりと納まる。
茶人が鑑賞するのは、茶碗を外側から眺めた時の造形美だけではない。茶碗を持ち上げた時の重さ、手で触ったとき、茶を飲むときに口を触れた感覚も含まれている。
樂茶碗は五感で感じるための茶碗といえる。
『 WAKEI-SEIJYAKU 』
~ 縦糸と横糸で織りなす囲炉裏の世界 ~
今回は見えないところまで気遣い整える茶道のもてなしの心にならい、裏面にも絵を描いた。
外枠を囲炉裏に見立て、区切られた四つの枠に茶道の教え「和敬清寂」をそれぞれ花に置き換え描いた。
十字の木は縦糸横糸に見立てる。
縦糸は、時が経っても「変わらないモノ」(軸)で、伝統や価値観などを指し、横糸は、時代に合わせて「変えていくモノ、変わっていくモノ」(状況や時)を表している。
また、両親それぞれの家紋を配し、交わった部分にあるのが自分として光で表現。